JICA提出調査報告書から抜粋
NPO OMETA  矢野 守
1 要請背景
  パナマ国の保健衛生行政は、保健省(Ministry of Public Health: Minsterio de Salud)が所管している。 保健省管轄下の医療保険施設は全国に643ヶ所あるが、それら施設にある機器の保守・管理については、 組織的に行われていない。  本省のインフラストラクチャー部(Infraestructura de Salud)が担当部門で あるが、パナマ市内の国立病院への日常な対応だけで手一杯の状況である。 その理由は専門知識を持った技術者が少なく、計画的な医療機器のメンテナンス活動(定期点検等)が 実施されていない。 同省では、医療機器メンテナンスに関し、業務計画の立案、業務指導、教育、具体的な不具合処理の 指導を行う人材を求めている。

2

調査目的
  本調査団は、平成14年度のシニア海外ボランティア・グループ派遣に対し、当会、特定非営利活動法人 海外医療機器技術協力会(NPO Ometa)の医療機器登録技術者、または関係企業の 技術者の派遣を図るために、パナマ保健省管轄の医療保険施設を訪問し、要請開拓調査を実施した。
3 調査概要
  (1) 調査団員 矢野 守 (特定非営利活動法人海外医療機器技術協力会 事務局)

(2) 調査期間

2002年4月8日~2002年4月20日

(3) 調査事項

a. パナマ保健省管轄の主要医療保険施設の訪問、現状を調査。
b. 病院訪問調査の後、保健省に報告会の実施、今後の派遣促進を図る。

4 調査結果
  パナマ保健省のインフラストラクチャー部担当者2名と同行の上、パナマ市内の病院2ヶ所、 地方病院 5ヶ所を訪問、医療機器のメンテナンスが特に重要な放射線科、理化学検査室、機材保守 管理部門(ワークショップ)を調査。

4月11日
保健省医療機材管理部
パナマ全国に643ヶ所ある医療保険施設(病院、診療所)に納入された医療機器(特に電子機器)の 保守管理に必要な検査機器、交換部品、及び点検・修理のための説明書(サービスマニュアル、 取扱説明書)を管理している。 昨年は管轄の保険施設の保守管理者を対象に歯科機材、麻酔機器、患者モニターのセミナーを開催。 (保守管理者が所属する機材管理科がある保険施設は全国に155ヶ所)

1 .Hospital Oncologico (パナマ市、保健省に隣接
放射線科に設置されたX線装置、検査室の血液分析装置等の稼動状況を調査。 保健省の医療機材管理部の管理が行き届いているためか、機材は良好に使用されている。 消耗品・交換部品の在庫は問題なし。

2. Hospital Santo Tomas (パナマ市内)

現在、病院は改築中で今年から来年にかけて、工事が完了する。 放射線科のX線装置、CTの稼動状況を調査→旧型のX線装置の故障を除き、使用されている。ワークショップは改築のため、業務は停止している様子。
4月12日
3. Hospital Aquilino Tejeira (Penonome City)

パナマ近郊の診療所。 放射線科、理化学検査室の機材の稼動状況を調査。
韓国政府からの借款で納入された大型医療機器(X線装置、超音波診断装置、理化学機器)の引渡し説明がまだ実施されていないため、使用されていない。その他の機材は納入後、年月が経過しているものが多い。ワークショップは検査器具・サービスマニュアル等が不足、整理も不十分。
4. Nicolas Solano (Chorrera)

放射線科、理化学検査室、手術室の機材の稼動状況を調査。
多くの機材は良好の状態で使用されている。 同病院には3名の保守管理技術者が配置され、各科の機材担当者と連絡をよく取り合っている様子。ワークショップは 一般検査器具・機種専用検査機器・サービスマニュアル等、良好に管理されている。

4月15日

5. Hospital Chicho Fabrega (Santiago City)
~16日
6. Hospital Ceilio Castillero (Herrera City)
7. Franco Sayas (Los Santos City)


各病院の放射線科、理化学検査室の機材の稼動状況を調査。
→ 共通した問題: 長年使用されている機材(特に放射線装置、滅菌装置)の消耗品・交換部品の調達が難しい。 機材点検のためのサービスマニュアルの管理状態が悪い。韓国借款で納入された機材が「引渡説明待ち」で使用されていない。ワークショップの検査器具・交換部品は不足が多く、消耗品の調達が困難。 以上